革素材には本革(天然皮革)と合皮(合成皮革)があり、見た目はとてもよく似ています。
素材や性質などの特徴を覚えておけば、見たりさわったりしただけで違いを見分けられるでしょう。
この記事では、本革と合皮それぞれの特徴や見分け方などを解説します。
本革にも合皮にも、それぞれのメリットとデメリットがあるので、
個々の特徴を把握し、革製品を購入する際にお役立てください。
本革と合皮、それぞれの特徴は?
本革と合皮は一見すると似ていますが、実はまったくの別モノです。
見た目や手ざわり、耐久性、エイジング(経年変化)の有無、価格など、多くの相違点があります。
本革と合皮のどちらがいいか迷っている方は、それぞれの特徴を確認しましょう。
それによって見分け方がわかり、自分の目的に合う素材が見つかります。
本革(天然皮革)の特徴① なめし
動物の皮を使った天然皮革のことを本革と呼びます。本革には主に以下の特徴があります。
- 素材……動物の皮
- 耐久性……高い
- 耐水性……低い
- 寿命……メンテナンスをすれば長持ちする
- 経年変化……色に深み、艶が出てエイジングを楽しめる
- 価格……高い
本革とは、動物の皮をなめして革にしたものです。
動物の皮は、そのままでは腐ったり固くなったりします。
しかし、なめし加工によって腐敗を防ぎ、柔軟性を保つことができるのです。
なめし加工の代表的な種類には「タンニンなめし」「クロムなめし」の2種類があります。
また、これらを組み合わせた「混合なめし」もなめし加工のひとつです。
タンニンなめしは時間をかけて植物由来のタンニン(渋)を浸透させる方法。
すでに紀元前からヨーロッパでおこなわれてきたとされる、伝統的な工法です。
時間も手間もかかりますが、使うほどになじみ、色に深みが増していきます。
経年変化を楽しめるのがタンニンなめしの大きな特徴といえるでしょう。
クロムなめしは、塩基性硫酸クロム塩などを使って短時間でなめす方法です。
クロムなめしを施した本革は劣化しにくくなり、経年変化はあまり感じられなくなります。
本革(天然皮革)の特徴② 動物による違い
牛や豚などのほか、ヘビやトカゲなどのエキゾチックレザーまで多くの種類がある本革。
主な革素材には次のような特徴があり、見分け方のヒントになります。
- 牛革……本革の中で最も流通量が多く、鞄、財布、靴などさまざまな革製品に使われています。牛革には牛の性別や年齢によってたくさんの種類があり、生後6ヶ月以内の仔牛の革を使った「カーフスキン」は流通量が少ないこともあって高価です。
- 豚革……薄くて軽いため、腕時計のバンドや靴、バッグの内装など、多彩な革製品に使用されています。表面に3つずつ並ぶ穴が豚革の特徴。日本は豚革の生産量が多く、革製品の中で唯一、自給自足が可能な素材のため、比較的安価です。
- 馬革……馬の臀部からとれる希少な「コードバン」と、コードバンを除く「ホースハイド」の2種類があります。ホースハイドは薄くて柔らかいため、ジャケットなどに使われます。一方、コードバンは美しい光沢があることから「革のダイヤモンド」と称され、馬1頭から少量しかとれない希少性の高い素材です。牛革の2〜3倍の強度があり、主に財布やランドセルなどに使用されます。
- 羊革……羊革は柔らかいため、ジャケットや手袋などによく用いられます。生後1年以上の羊の革は「シープスキン」、生後1年未満の子羊の革は「ラムスキン」と呼ばれます。羊の毛皮をそのままなめし、毛を伸ばして染色したものが「ムートン」です。
- 山羊革……しなやかで丈夫なことが特徴です。生後半年以上の山羊の革はゴートスキン(ゴートレザー)、生後半年以内の仔山羊の革は「キッドスキン」と呼ばれます。きめ細やかなシボ(凸凹模様)が自然に出ていることが特徴です。
合皮(合成皮革)の特徴
合皮とは、本革に似せて作られた人工的な皮革です。
近年は加工技術の向上によって、本革との区別がつきにくい合皮もあります。
しかし、見た目が似ていても素材が異なるため、性質は違います。
合皮には主に以下の特徴があり、本革との見分け方のポイントとなります。
- 素材……布地の表面を合成樹脂でコーティングしたもの
- 耐久性……低い
- 耐水性……高い
- 寿命……短い(3年程度)
- 経年変化……なし
- 価格……安い
合皮は布地の表面に合成樹脂を塗布して革の風合いを出したもの。
一見すると本革っぽいですが、動物の皮ではなく人工的な素材なのでフェイクレザーとも呼ばれます。
合皮に使われている合成樹脂はポリ塩化ビニールやポリウレタンで、それぞれPVCレザー、PUレザーなどの呼称もあります。
PVCレザーは手ざわりがツルツルしていることが特徴。表面はPUレザーよりも固く、通気性はよくありません。
水拭きや中性洗剤を使ったお手入れが可能なので、メンテナンスしやすいというメリットがあります。
一方で、弾力性はPUレザーに劣り、長く使っていると表面が硬くなってコーティングが割れやすいというデメリットも。
PUレザーはPVCレザーより通気性が高く、手ざわりが柔らかいため、見た目や質感が本革に似ています。
撥水性は高いものの、ポリウレタンが加水分解するため、濡れたままにしておくと劣化しやすいです。
お手入れをするときは、できるだけ乾拭きにしておきましょう。
湿度の高い場所では加水分解しやすいため、劣化が早まります。
PUレザーは劣化すると表面が剥がれ落ち、ベタベタになりやすいことが特徴です。
加水分解したものは元に戻らないので、湿度が高いところに保管しないようにしましょう。
合皮は製造・加工しやすく、大量生産も可能。本革に比べて安価ですが寿命は3年程度です。
使っていると劣化は避けられないため、長く大切に使いたいアイテムには向いていません。
本革と合皮を見分けるポイントは?
合皮は本革に似せて作られているため、容易には見分けがつきにくいかもしれません。
近年は技術力の向上で本革に似た合皮が増え、間違えて合皮を購入してしまった人もいるでしょう。
しかし、革の表面をじっくりと見て、手で触れてみたら違がわかります。
また、本革と合皮では耐久性が違うため、長く使っているものはさらに見分けがつきやすいです。
これらをふまえて、本革と合皮の見分け方を4つご紹介します。
ポイント① 革の断面を見てみる
革の断面部分、たとえばベルトの穴やバッグの持ち手などを見ることで、本革と合皮を見分けられます。
革の表面は「銀面」といってなめらかで光沢があります。
銀面を削り取った裏面は「床面」といって繊維質な素材で、毛羽立ちが特徴的な「スエード」は床面が使われています。
本革の断面は繊維の層になっていて、毛羽立っているのが特徴です。
断面部分に繊維のケバ立ちが見られたら本革と判断できるので、見分け方のポイントとして覚えておきましょう。
革の裁断面は「コバ(木端)」といい、ヘリ返しやコバ磨き(切り目)で処理される革製品もあります。
コバがきれいに処理された革製品は断面での確認が難しいかもしれません。
切りっぱなしになっているときは繊維の層が見られるか確認してみましょう。
一方、合皮は布の表面に樹脂を塗布した素材なので、断面部分も塗料でコーティングされています。
基本的には本革のように切りっぱなしになることはほとんどありません。
合皮は布地が見えていたりほつれて糸が出ていることもあり、見分け方のポイントとなります。
ポイント② 革の表面をさわって質感をチェック
合皮は本革に似せて作られていますが、天然皮革特有の手ざわりまでは再現できません。
革の表面をさわってみて質感を確認してみましょう。
本革の表面をさわるとしっとりして吸い付くような感触です。
一方、合皮は表面がコーティングされているため、ナイロンのようにツルツルしています。
合皮は通気性が悪く、手で長く触れていると汗が浮かんできます。
一例として挙げられるのが合皮のソファ。長時間座っていると汗で蒸れてきますが、これも通気性の悪さが原因です。
長く使っている合皮は乾燥してひび割れたり、手ざわりがベタベタしたりするので見分けやすいでしょう。
また、本革の表面には毛穴や血筋の跡があります。
なめし処理によって毛穴は見えなくなっているものもありますが、ライトの下で見える場合もあります。
これらは合皮の表面にはありませんので、質感を確かめるときに表面をじっくり見てみましょう。
ポイント③ 革を折り曲げてシワを確認
革を軽く折り曲げてシワの様子を確認することでも本革と合皮を見分けられます。
本革は、折り曲げると現れるのが、毛穴や銀面の模様です。
表面を内側にして折り曲げると、細かく不規則なシワが見られます。
一方、合皮は折り曲げても表面が伸びるだけです。
合皮は布地を樹脂でコーティングしているので、樹脂が浮き上がるほどの大きく不自然なシワができることがあります。
ポイント④ 革の経年変化でひび割れがないか
本革は経年変化が楽しめることが特徴です。
お手入れ不足で乾燥しすぎるとひび割れすることもあります。
しかし、定期的に皮革用のクリームやオイルを塗って保湿しておけば、ひび割れができることはほとんどありません。
一方、合皮を長く使っていると表面の樹脂が劣化します。
PVCレザーは経年変化でひび割れが発生し、下地の布が見える場合もあります。
本革は耐久性が高く、長く愛用できることが魅力のひとつです。
使っているうちに表面がひび割れてきたら、素材は合皮と考えられます。
本革と合皮のメリット・デメリット
本革と合皮には主に次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
本革 | ・耐久性が高い ・経年変化を楽しめる ・高級感がある |
・水に弱い ・定期的なメンテナンスが必要 ・価格が高い |
合皮 | ・水に強い ・汚れがつきにくい ・お手入れが簡単 ・価格が安い |
・耐久性が低い ・経年変化を楽しめない ・高級感がない |
【本革】経年変化が大きな魅力
それぞれのメリットとデメリットを詳しく解説します。
本革は耐久性が高いため、メンテナンスしながら長く使えて経年変化が楽しめます。
質感は柔らかく変化していき、肌になじみ、色には深みと艶が増してきます。
合皮に比べると高級感がある点も本革のメリットといえるでしょう。
本革はピカピカの新品の頃も美しいですが、使い込んだ状態も独特の美しさを感じられます。
自分だけのものに育てられる喜びも、本革がもつ魅力のひとつです。
いま一度確認しておくと、経年変化が楽しめるのは植物タンニンなめしが施された本革のみです。
タンニンが紫外線や空気中の酸素に触れて酸化することで色が深みを増していきます。
また、長年使っていると、手のひらの油分が革に吸収されていきます。
繊維に浸透していた油分が革表面に滲み出てきたりすることで艶も増します。
新品の頃とは違う味わい深い表情が見られるため、愛着が湧いてくるでしょう。
一方、本革のデメリットとしては水やカビに弱いことが挙げられます。
本革は耐久性が高くて丈夫ですが、雨や湿気には弱いため、できるだけ濡らさないように注意が必要です。
湿ったまま放置しているとカビの心配もあるので、濡れたときは風通しのよい日陰で乾かしてから収納しましょう。
本革は、乾燥を防ぐためにオイルやクリームを使った定期的なメンテナンスが必要。
お手入れがほとんど必要ない合皮に対して、本革は手間の面がデメリットといえます。
とはいえ、本革はメンテナンスしながら使えば合皮の何倍も長持ちします。
合皮に比べると価格が高いですが、コストパフォーマンスは高いといえるでしょう。
持ち物を頻繁に買い替えず、長く大切に使いたい方には本革が向いています。
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【合皮】安価だが耐久性は低い
合皮は本革に比べて高級感はありません。
しかし、価格が安く、気軽に購入しやすいことがメリットといえます。
合皮は基布にポリ塩化ビニールやポリウレタンなどの合成樹脂を塗布して作られています。
水に強く、汚れがつきにくいという点も合皮のメリットです。
合皮には、汚れたときに水拭きが可能なものもあります。
そうした合皮はお手入れが楽で、定期的なメンテナンスもほとんど必要ありません。
ただし、お手入れが楽でも、使っているうちに劣化していくため長持ちしません。
耐久性が低く、数年で表面がボロボロになったり、ひび割れたりすることがデメリットです。
合皮の表面が劣化してボロボロになるのは「加水分解」が原因です。
加水分解とは、ポリウレタンやポリ塩化ビニールに起こる劣化現象。
空気中の水分や紫外線、摩擦、ゴミの付着などが原因となり、表面にひび割れが起こってしまいます。
合皮は撥水性が高いとはいえ、水分は劣化の原因になります。濡れたままにしないように注意しましょう。
また、合皮の中には劣化すると表面がベタベタになるものもあります。
使っているうちに見た目だけでなく、使い心地も悪くなってしまいます。
愛用品として長く大切に使いたい場合は合皮を避けた方がよいでしょう。
合皮は革に似せて作られていますが、本革の高級感や品格までは再現できません。
革のような経年変化は見られず、劣化してしまうことが合皮の大きなデメリットといえます。
本革と合皮のお手入れについて
最後に、本革と合皮のお手入れ方法をご紹介します。
本革は水に弱い素材ですが、耐久性は高いため、お手入れしながら使えば長持ちします。
一方、合皮は基本的に面倒なメンテナンスの必要はありません。
しかし、濡れたときや汚れたときは、簡単なお手入れをおすすめします。
本革と合皮それぞれのお手入れ方法について解説します。
本革のお手入れ方法① 防水ケア
本革は水に弱いため、雨などに濡れるとシミになることがあります。
きれいに使うためにも次の手順で防水ケアをしておきましょう。
1.表面を乾拭きする
まずは表面を柔らかい布で乾拭きしましょう。
縫い目には汚れがたまりやすいので、細かい部分までしっかりと汚れを落としておきます。
2.防水スプレーを吹き付ける
屋外で防水スプレーを吹き付けましょう。
まずは目立たない場所にスプレーして、変色などがないか確認してください。
問題なければ30cmほど離して表面がうっすら濡れる程度に全体を均等にスプレーしましょう。
3.陰干しする
風通しのよい日陰に置いて乾かします。
4.乾拭きする
表面が乾いたら最後に柔らかい布で乾拭きします。
防水スプレーを吹きつけても防水効果は徐々に薄れます。
そのため、定期的に防水ケアをおこなってください。
ただし、防水スプレーを使っているからといって水に濡れるのはNGです。
できるだけ水がかからないように注意し、もし濡れたときはすぐに拭き取るようにしましょう。
本革のお手入れ方法② 保湿ケア
日常的なお手入れは、乾拭きでホコリを取る程度で問題ありません。
加えて、定期的なメンテナンスで、きれいな状態をキープできます。
次の手順で汚れを落とし、保湿ケアをおこないましょう。
1.ホコリを落とす
まずは表面のホコリを落とします。隙間のホコリはレザー用ブラシを使って払いましょう。
2.汚れを落とす
汚れが気になるときは、布に本革専用のクリーナーを少量つけて、汚れた部分をトントンと叩くように落としましょう。
3.オイルやクリームをなじませる
本革用のオイルやクリームを少量布に取って、円を描くように全体になじませます。付けすぎるとシミや色落ちの原因になりますので少量にしておきましょう。初めて使う時は、目立たない場所で色落ちしないか試してから使ってください。
4.陰干しする
オイルをなじませたら、風通しの良い場所に陰干しして乾かします。
5.乾拭きする
乾いたら柔らかい布で乾拭きして仕上げます。
合皮のお手入れ方法
合皮は汚れがつきにくい素材ですが、汚れたときは早めに拭き取りましょう。
PVCレザーは水拭き可能です。表面が汚れたときは、軽く濡らした布で拭きとりましょう。
汚れがひどいときは薄めた中性洗剤を布に含ませ、軽く叩くようにして落とします。
別の濡れた布で拭き取ったら風通しのよい日陰に干して乾燥させましょう。
ただし、PUレザーは加水分解が進むため、注意が必要です。基本的には乾拭きの方がよいでしょう。
合皮は油分を補給しても浸透せず、本革のような保湿は必要ありません。
汚れたときや濡れたときに拭き取る程度で済むため、手間いらずです。
まとめ
本革と合皮の見分け方はおわかりになりましたでしょうか?
合皮は耐久性が低いものの、価格が安価であるため気軽に買い替えやすいというメリットがあります。
一方、耐久性が高く経年変化を楽しめる本革は、長く愛用できることが魅力です。
本革にも合皮にもそれぞれメリット・デメリットがあります。
次第に劣化していく合皮に対し、本革は色や艶が変化して味わいが増してくる素材。
本革には、自分だけの一品に育て上げる楽しみがあります。
エイジング(経年変化)を楽しみながら革を育てる喜びを味わいたい方には本革が向いています。
上質な革製品を長く愛用したい方、記念品などに革製品を贈りたい方は、本革を選んではいかがでしょうか?