革製品のスペック欄などに書かれている「床革(とこがわ)」という言葉をご存知ですか?
床革とは、革の表面をはいだ残りの部分のこと。
表面部分が付いた革を「本革」とするのに対して、残った部分が床革になります。
床革と本革の違いを知っておくと、革製品の購入の際、よしあしの見分け方にも役立ちます。
この記事では、床革と本革の違いを詳しく解説します。よい革製品に巡り合うためにも、ぜひご活用ください。
床革って何? 本革とは別物?
動物の「皮(skin)」を「革(leather)」に加工するためには「鞣(なめ)し」と呼ばれる工程が必要です。
なめしとは、皮の脂肪や毛を除き、耐久性・可塑性・柔軟性を与えるための作業を指します。
なめしは使用する薬剤によって、タンニンなめし、クロムなめし、混合なめしなどに分類されます。
なめされた革は、色付けなどの加工を施して製品に仕立てますが、そのまま使うことはできません。
厚みを調整する「漉(す)き」という工程が必要となります。
層ごとにみると、革の表面にあたる第1層の革が本革で、第1層をはぎとった後に残る2層目が床革。
床革には、表面にポリウレタン樹脂などを加工して強度を高めた「スプリットレザー」もあります。
広義の“本革”は本物の動物の皮という意味
誤解されがちなのが、本革という言葉が、もっと広い意味で使われるケースです。
本革は、辞書などでは「合成または人造ではない本物の革。天然皮革」とあります。
広義では、動物の皮をなめした革の総称で、天然皮革全般を指す言葉であることがわかります。
つまり、床革も本革に含まれるわけです。
狭義の“本革”は革の表皮がついた部分を指す
バッグや靴などの皮革製品について語るとき、厳密に本革と呼べるのは表面部分の革のみです。
それ以外の部分は床革と呼び、区別しています。
もっと具体的にみていきましょう。
動物の皮は表皮、真皮層、皮下組織の3つの層で構成されています。
なめしを行うことで表皮と皮下組織は取り除かれ、真皮層のみが革として使われます。
真皮層はさらにいくつかの層に分かれ、表皮に近い上側を銀面層(乳頭層)、下側を網状層と呼びます。
この銀面層が残っている革が本革にあたります。銀面層がなく網状層のみで構成されているのが床革です。
ヌバックやエナメルのように銀面の一部を削った革。
スエードのように真皮層を割って特殊な加工をしてから裏面を使用する革。
これらはいずれも銀面層が残っている本革として定義されています。
床革の特徴は? 本革との違い
それでは、床革にはどのような特徴があるのでしょうか?
本革との違いも含めて説明していきます。
床革と本革の違いは銀面がついているかどうか
本革は表皮の付いた一番上の層。床革は本革をはいだ残りの下層部分。
大きな違いは、表皮の部分の有無がポイントになります。
表皮の部分を「銀面(ぎんめん)」と呼び、この部分があるかないかで、革の性質は大きく異なります。
そのため、銀面が付いていることを表して、本革を「銀面付き」「銀付き」と呼ぶことも。
では、銀面のある本革と、ない床革ではどのような違いがあるのでしょうか?
床革と本革を比べると? メリット・デメリット
ここでは、革製品を比較する際に見るべきいくつかのポイント別に、床革と本革の特徴をまとめました。
本革 | 床革 | |
耐久性 | 長く使える | 長く使えない |
耐水性 | なし | あり |
耐熱性 | なし | なし |
経年変化 | する | しない |
価格 | 高め | 手ごろ |
維持費 | かかる | かからない |
メンテナンス | 必要 | 簡単 |
[耐久性]
銀面付きの本革は耐久性に優れた素材です。銀面層は非常に密な構造になっています。
そのため裂けにくく、強度があってしなやか。
本革を使った革製品は、定期的にお手入れを施してさえいれば数年、数十年と使い続けることができます。
一方、床革を構成する部分は網目状で、すき間が多く、粗い構造です。
本革に比べてひっぱり等に弱く、裂けたり破れたりしやすくなっています。
表面に樹脂をコーティングし、一定の補強を加えて使用することもあります。
ただし、構造自体がもろいので、本革の耐久性には及びません。
[経年変化]
本革の魅力のひとつに挙げられるのが、エイジング(経年変化)を楽しめることです。
使うほどに革の質感がしっとりとし、柔らかく手になじむ手ざわりに変わっていきます。
さわり心地だけでなく、見た目にも変化が生じます。
オイルでお手入れすることで風合いや深みが現れてくるのです。
これは、密な構造の銀面が付いている本革ならではの魅力といえます。
硬い繊維が少しずつ柔らかくなり、しなやかになるために起こる変化です。
なお、すべての本革に経年変化が現れるわけではありません。
植物由来のタンニンを用いてなめした革は、経年変化が起こりやすくなります。
化学物質であるクロムを使ってなめした革は、タンニンなめしの革に比べると変化は小さいです。
床革では、このような経年変化の楽しみを味わうことはできません。
[耐水性・耐熱性]
本革のデメリットのひとつに、水や熱に弱い点が挙げられます。
雨や汗で色落ちすることがあるため、本革の革製品には防水ケアが必須。
濡れてしまった場合、そのまま放置するとシミになってしまうことも。
適切なお手入れが必要です。また、熱にも弱いため、直射日光で日焼けして劣化が進んでしまうこともあります。
床革の場合、表面に樹脂加工が施されていることが多いため、撥水性が優れています。
水に濡れやすい環境で使う製品におすすめです。
一方、樹脂加工のため熱には強くありません。
本革と同じく、直射日光が長時間あたることを避ける必要があります。
[価格]
本革は製造コストが高いため、本革製品も価格は高くなります。
本革に比べると、床革を使った製品は価格をおさえることができます。
[メンテナンス]
本革は使っているうちに乾燥が進みます。
乾燥した状態が続くと劣化につながるため、定期的にオイルを使ったお手入れを施し、革に油分を補給する必要があります。
水や汚れにも弱いため、濡れてしまったり汚れがついてしまった場合には、それぞれ適したメンテナンスが必要です。
場合によっては、家庭でのお手入れでは不十分でプロへの依頼が必要になることも。
一方、床革は定期的な油分補給の必要はありません。
また、表面に樹脂加工が施されているため、水にも比較的強いです。
お手入れの手間を減らしたい場合は、床革の製品が便利でしょう。
[サステナブル]
床革は品質面では本革に劣るため、使わずに捨てられてしまうこともあります。
しかし、耐水性など床革の特性を生かした製品に活用されるケースもあって、サステナブルな素材としての一面が注目されています。
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本革と床革の見分け方
本革と床革にはさまざまな特徴の違いがあることがわかりました。
では、本革と床革はどうやって見分けることができるのでしょうか?
表面を見る
一番大きな違いが現れるのは表面の様子です。
本革には銀面が付いているため、よく見ると毛穴や皮のキメなど、動物の皮ならではのディテールや個性が現れます。
一方の床革には、銀面ならではのいわゆる革らしい質感がないため、表面を見ることで見分けることができます。
断面を見る
断面にも違いが現れます。
床革は、本革に比べて繊維が荒く、その密度も低いです。
スカスカ、ボソボソとしているように見えます。
触ってみる
触感や強度にも違いがあります。
銀面付きの本革はしなやかで強度があり、多少強く引っ張ってもちぎれることはありません。
一方、荒い繊維が低密度で集まっている状態の床革は、もろくてしなやかさに欠けます。
強すぎる力で引っ張るとちぎれてしまうこともあるほどです。
牛革=本革! 床革の場合は表記が必要
床革と本革にはそれぞれの特徴やデメリットがあります。
風合いや深みなどの革製品ならではのよさを楽しむには、やはり本革の製品がおすすめです。
革の製品を求める際、素材の表示に注意
家庭用品品質表示法では、銀面が付いた革(本革)ではない場合、牛革・馬革・豚革などと表記することが禁じられています。
そして、床革の場合は床革や牛床革などのように床革であることを明記しなければいけないとされています。
そのため、素材の表示欄によって本革であるかどうかを確認することができます。
スウェードも銀面付きの本革
ちなみに、スウェードやベロアなど特殊な加工が施されている革の場合。
加工によって銀面が付いていなくても、床革ではなく本革に分類するとされています。
まとめ ~ 本革工房の革小物は本革製 ~
床革と本革の違いについて解説してきました。
表皮の部分「銀面」が付いているのが本革で、ないのが床革です。
床革に比べて高価ですが、本革には経年変化や、長く使えるという魅力があります。
そんな銀面付きの本革で多種多様な革小物を製造・販売しているのが本革工房です。
厳選した国産牛革を使い、キーホルダーをはじめとする革小物を幅広く展開。素材はすべて畜産副産物のレザーです。
箔押しなどの名入れ加工にも対応しています。
高級感と特別感のある記念品をお探しの方は、ぜひ一度、Webサイトをご覧ください。